幕末から第二次世界大戦期までの間に、近代的手法によって建設され、我が国の近代化に貢献した産業、交通、土木に関する遺産のことで、全近では、産業・商業施設なども、近代化遺産に貢献した貴重な遺産として、次世代に適切に伝えていきたいと考えています。
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近代化遺産の見方・味わい方
私たちが日頃享受している水や電気、交通などの都市基盤、生活を支える様々な産業・文化の多くは、幕末から明治、大正、昭和という日本の近代期に、先人たちが海外の技術等を取り入れながら必死につくりあげてきた施設やシステムが礎となっています。これらの中には、現在まで受け継がれ、私たちが見て手に触れることができるものがあります。これらが近代化遺産と呼ばれる、近代化への情熱と知見が詰まった、かけがえのない資産なのです。
私たちのまちの近代化遺産
■今も私たちの暮らしを支えている近代化遺産のなかには現役で使われ続けているものもあります。近代化遺産とは単なる過去の遺産だけではなく、私たちの暮らしを支える都市基盤の一部の場合もあるのです。 |
小牧ダム(富山県砺波市) |
米内浄水場(岩手県盛岡市) |
■手入れして使い続けられる現役で使い続けるためには、その維持管理が必要です。多くの人たちの関わりがあって、動かされ活かされている近代化遺産があります。 |
■第二の人生を送り地域で活かされている現役で活躍する施設がある一方で、多くの近代化遺産がその役目を終えて別の用途で活かされています。地域と深いつながりを持つ近代化遺産は、独自の規模や形態がユニークな活動を生み出し、様々な地域の活性化や芸術文化の振興に役立っているのです。 |
旧国立新屋倉庫(秋田県秋田市) |
横利根閘門(茨城県稲敷市) |
■材料や工法に触れてみる長く木造工法に親しんだ日本は、近代に入り鉄や煉瓦、ガラスといった新しい材料と、工法を西洋から取り入れます。近代化遺産を構成する材料や、それを組み立てる工法は、技術導入にあたっての先人の苦心を偲ばせます。また鋳鉄のごつごつとした触感、歪んだガラス面などは、近づいて見たり、触れたりすることで、より深い味わいを感じることができます。 |
■動きやシステムを知る近代化遺産の多くは、産業や交通などのシステムの一部を構成しています。物の動きや人の流れなど、システムの理解が役割の理解につながります。近代化遺産の中には機械のように動くものがあり、稼働停止していても、かつてのダイナミックな動きを想像できます。福岡県大川市と佐賀県佐賀市にかかる旧筑後川橋梁(筑後川昇開橋)は昭和10年(1935)竣工の鉄道橋ですが、船の通行のため中央部分が昇降します。今はプロムナードとして活用され、定期的に橋の昇降を行い往時の役割を偲ばせてくれます。 |
旧筑後川橋梁(福岡県大川市、佐賀県佐賀市) |
三井三池炭鉱旧万田坑(福岡県大牟田市、熊本県荒尾市) |
■非日常的な空間を味わう工場や倉庫の大規模な空間、非日常的な造形や空間など、近代化遺産は力強さと不思議な魅力にあふれています。こうした空間が多くのアーティストたちを刺激し、芸術文化活動の舞台となっています。福岡県大牟田市と熊本県荒尾市にまたがる三井三池炭鉱旧万田坑では、シンボリックな櫓や、遺跡を思わせる坑口を活用して、市民やアーティストによるコンサートやイベントが行われています。 |
■デザインを味わう近代化遺産の中には普通の建造物と異なり、一般の人の目につきにくいものもあります。しかし、人目に触れない近代化遺産にも凝ったデザインがなされていることが多く、当時の技術者の気概を感じさせます。 |
旧三河島汚水処分場喞筒(ポンプ)場施設(東京都荒川区) |
神子畑選鉱所跡・シックナー(兵庫県朝来市) |
■自分たちで探し、活かす近代化遺産は、私たちのごく身近に存在しています。いずれの近代化遺産も、まちの歴史、人々の営みや生業と深く関わっています。近代化遺産が造られた背景には、関係した人たちの努力と知恵の結集があります。自分たちのまちを見直し、近代化遺産を発掘することで、先人たちの努力を見直すとともに、地域の歴史文化に対する理解を深めることができ、その活用を考えることで、これからの地域づくりに結び付けていくことができます。 |
参考文献等